どこがスゴイ
・ガス補充で冷えないエアコンが、キンキンに冷える
・ガス注入時の圧力さえ注意すれば、作業自体は難しくない
・道具と冷媒で2万~3万円くらい、どこまでやるかで違いがある
・配管が壁の中の場合、取り付け工事が簡単ではなく、費用も非常に高くなる
・メーターの単位が違う場合 MPaをpsiに換算 1MPa = 145.038 psi
今回は、冷えなくなったエアコンを自分でガス補充し、買い替えずに済んだという話です。実際、やってみると思ったほど難しくなく、これで暑い日も快適に過ごせるため、本当にやって良かったと感じています。
問題のエアコンは、キッチンにあるのですが。10年以上は使っており、冷えなくなったのは、3年ほど前から。冷風は、かすかに冷たさを感じる程度で、どんなに使っても室温を0.5℃下げるのが、やっとという状態です。
30℃を超える猛暑が続き、キッチンのエアコンをそろそろ買い替えようかという話になり、探したところ、エアコンの標準取り付け工事込みで7万円ほどというものを見つけました。
標準取り付け工事というのは、販売するところにより、多少の違いがあるのですが。私が見つけたのは、壁に穴をあけ、室内にエアコン本体を取り付け、外に室外機を置くというものです。
買い替えの場合、古いエアコンの取り外しに7000円ほどかかり、室外機の交換、リサイクル料金などは別にかかります。
10万円以下で済めば、買い替えようかと考えていたんですが。ここで、大きな問題があることに気づきました。それが、隠ぺい管です。隠ぺい管は、壁の中に、エアコンと室外機を結ぶ配管があるものです。

エアコンの取り付け工事で隠ぺい管がある場合、大手の家電量販店では、工事を請け負わないところが、ほほとんどです。注意が必要なのは、取り付け工事の案内に、隠ぺい管ではないことという文言があったりします。
これを知らずに注文してしまい、工事しようとしたところ隠ぺい管で設置できなければ、キャンセルせざるを得なくなり、エアコンを返品し、キャンセル料が発生します。
一部の家電量販店では、隠ぺい管でも工事を請け負うところもあるのですが。この場合、現場で業者さんが状況を調べ、取り付け費用を計算するため、かなり割高になります。
住宅メーカーに問い合わせて、新しいエアコンに買い替えを依頼すれば、隠ぺい管でも取り付け工事するものの、エアコンの価格は定価、配管の洗浄などもあり、14,5万はかかります。
キッチンのエアコンでもあり、そこまでして買い替えるのは、ちょっととなりました。それなら、ダメ元で自分でガス補充してみようかという話になりました。

注入するフロンガス(冷媒)にも種類があり、室外機の横に、冷媒の記載があるのですが。我が家のエアコンは、型が古く、冷媒も『R410A』なため、不燃性で火災の心配はありません。最近のエアコンでは、冷媒が微可燃性のものもあります。


早速、ガス補充に必要になるものを揃えました。R410Aのガスボンベが高く、かかった費用の半分以上が、ガスボンベです。
メーターが2つあるマニホールドゲージは、低価格なものだったからか、圧力の単位が違い、『MPa(メガパスカル)』ではなく、『psi(ピーエスアイ)』です。主にアメリカでは、MPaではなく、psiが使われているそうです。
1 MPa = 145.038 psiで換算できます。エアコンの強制運転時の圧力が、0.8~1.0MPaの場合、psiでは、116~145psiになります。


これが、チャージバルブなのですが、購入してから、自分でパッキンを付けるタイプと気づきました。何の説明もないため、初めての方だと、そのまま使ってしまいそうですが、このままだとガス漏れします。

自分でチャージバルブ内の白いプラスチックをラジオペンチで外し、付属のゴムパッキンを取り付けます。これが、結構、硬くハマっていて、手間がかかりました。

その後、チャージバルブとホースを接続するアダプターを購入しています。マニホールドのセットには、変換アダプターが一つ入っているのですが、冷媒のガスボンベとチャージバルブの2つに使うため、足りなくなり、2個セットを購入しています。ちなみに、変換アダプターのサイズは、オス5/16、メス1/4です。
ガス補充は、どこまでやるかで違いがあります。業者さんのようにガス漏れを点検し、しっかり丁寧にやるか、それとも手っ取り早く、ガス補充だけ済ませ、今シーズンくらい問題なく冷風が出ればいいかで違いがあります。
具体的にには、業者さんのように丁寧にやるなら、真空引き(配管内を真空する作業)を行い、配管内の空気と水分を抜き、ガス漏れも点検してとなると、真空ポンプが必要になります。
そこまでしなくても、とりあえず、ガスの補充だけ行い、冷風が出ればいいとなれば、真空ポンプを使わず、ガスの注入だけというのも、自分で修理するなら、アリかなとなります。
まずは、ガス補充のために、室外機、マニホールドゲージ、冷媒のボンベ(R410A)、真空ポンプをつなげます。
最初に、室外機の配管がある方のカバーを外します。ネジが1本か2本で固定されていて、ネジを外し、カバーを下方向にスライドさせて外しました。

上が高圧バルブ(二方弁)、下が低圧バルブ(三方弁)です。二方弁、三方弁の違いは、ガスや液体が流れる流路が、2方向なのか、3方向なのかという違いです。
下の低圧バルブ(三方弁)の室外機に向かって、手前にあるのが、サービスポートです。ここから、ガスを注入します。
サービスポートは、真ん中を押すと弁が開く仕組みになっていて、ここに、開閉のためのチャージバルブを取り付けます。

閉じた状態

開いた状態
ゴムパッキン交換前ですが。チャージバルブを取り付ける時の注意点は、閉じた状態になっているかどうかを確認することです。『閉じる』が中の突起がへっこんだ状態、『開く』は中の突起が出た状態です。
誤って、チャージバルブが『開く』状態で突起が出たまま、サービルバルブと接続しようとすれば、ガスが漏れ出すため、注意が必要です。
チャージバルブとホース、ガスボンベとホースの2か所は、接続するために変換アダプターを間に入れています。
各ホースをつなぐ時には、レンチなどでわざわざ締める必要はなく、手で強めに締めるだけで十分です。

全てをつなぐと、こんな感じになります。マニホールドゲージの低圧(Lo)と高圧(Hi)があり、メーター下のバルブは、どちらも閉じた状態。冷媒のガスボンベの上にあるバルブも、閉じた状態です。
真空ポンプを使う場合、オイルを入れる必要があり、ゲージのMAXとMINの間まで入れます。ガス補充だけで、真空ポンプを使わない時にも、マニホールドゲージの高圧(Hi)のバルブは閉じます。
これで準備が整ったことになります。
丁寧にガス漏れ点検し、ガス補充するなら
1.マニホールドの低圧と高圧のバルブ、どちらも開き、配管内(マニホールドゲージにつながった3つのホース内)を真空ポンプで真空にします。
真空ポンプのスイッチをオンにし、真空状態(メーターがゼロ以下)になったら、真空ポンプを停止。これは、真空にする範囲が狭いため、秒で終わります。
2.マニホールドゲージの真空ポンプとつながる高圧側のバルブを閉じ、室外機のサービルバルブに接続したチャージバルブを開きます。

マニホールドゲージの低圧側のメーターが上がり、エアコンを使わず、室外機が停止した状態の圧力が分かります。私の場合、停止時の圧力は、1.1Mpa(165psi)ほどありました。
3.エアコンの強制運転を開始します。この方法は、エアコン本体のカバーを上げ、ボタンを長押して、強制運転を開始します。
私のエアコンの場合、強制運転しっぱなしにはならず、20分ほどで停止します。作業自体は、そこまで長くかからないため、時間的に余裕が無いということでもないです。

強制運転を開始すると、エアコン利用時の圧力が徐々に下がり、低圧側のメーターは、0.3Mps(55psi)です。ガスが不足している場合、強制運転時の圧力は、極端に下がります。
4.今度は、エアコンと室外機を行き来している冷媒を室外機に全て閉じ込め、ガス漏れを点検するための準備に入ります。
やり方は、強制運転した状態で、室外機の高圧バルブを閉じ、マニホールドゲージの低圧側のメーターが0MPa以下になったら、室外機の高圧バルブの下にある低圧バルブも閉じ、エアコンを停止します。これで、全ての冷媒を室外機に閉じ込めたことになります。
室外機の高圧バルブと低圧バルブを閉じるには、4mmの六角レンチが必要になります。高圧バルブと低圧バルブに『HJ』とかかれたキャップナットがあり、それをレンチで外し、六角レンチで中のネジを閉めます。
5.室外機に冷媒を閉じ込めたまま、真空ポンプをオンにし、マニホールドゲージの高圧バルブを開きます。これで、冷媒が通っていないエアコンと室外機を結ぶ配管を真空引き(真空にする作業)します。
真空の状態で、さらに真空ポンプを使い、真空にしたら、配管を痛めるんじゃないかと思われそうですが。そんなことはなく、真空が行き過ぎて配管を痛めるということはありません。
真空引きにかける時間は、業務用なら1時間くらい、家庭用なら、配管の長さにより違いがあり、15~30分くらいです。
真空にする理由は、配管内の余分な空気や水分、異物を取り除くためです。これがエアコンを快適に使うためには、重要なこととされています。
真空引きを終えたら、しばらく放置します。メーターが0MPaのままなら『ガス漏れなし』、少しでも上がれば、『ガス漏れあり』という判断になります。
ガス漏れがある場合、漏れる場所は決まっており、冷媒が流れる配管の接続部分が大半です。エアコンとの接続部分か、室外機との接続部分のいずれかになります。
室外機との接続部分は、高圧バルブと低圧バルブに接続されたところなため、締め直すのは簡単ですが。エアコン側の場合、隠ぺい管ならエアコンを外す必要があり、隠ぺい管じゃなくても、断熱材などを巻き付けているため、それを剥がす必要があり、大変です。
もともとエアコンを設置した業者さんが、ちゃんとしたところで丁寧に行われていれば、そうそうガス漏れはないはずです。
ただ、どんなに丁寧にエアコンを設置していても、10年ほど経ったものでは、接続部分から微量にガスが抜けることはあり、この程度だとメーターは0MPaのままです。
6.サービスポートのチャージバルブを一旦閉じ、マニホールドゲージの真空ポンプとつながる高圧バルブも閉じ、室外機の高圧バルブと低圧バルブを開き、エアコンの強制運転を開始します。
再び、チャージバルブを開き、マニホールドゲージの低圧側のメータが上がります。強制運転が続くと、しばらくして、メーターが下がります。
この状態で冷媒のガスボンベを開き、冷媒を注入します。冷媒がR410A、室外機の低圧側の適切なガス圧で調べたところ、いろいろあり、0.5~0.9MPa(72~130psi)という話もあれば、0.8~1.0MPa(116~145psi)もあり、業務用なら0.9~1.6MPaなど様々です。
個人的には、冷媒を入れ過ぎれば、エアコンを痛めたり、故障の原因にもなるものの、低過ぎて冷えないのも困るため、0.9Mpa(130psi)まで入れることにしました。

冷媒を入れたガスボンベなのですが。このバルブが、非常に硬く、開くのに手間がかかりました。冷媒を入れ過ぎても困るため、片手でボンベを抑えつつ、もう一方に力を込めて回しました。
個人的には、そこまで力がある方ではないため、ゆっくりでは回らず、瞬間的に、力を入れて、クックッという感じです。ちょっと回して、ガスが一気に入るという感じではなく、最初が硬いだけです。
少し冷媒を入れては、ガスボンベのバルブを閉じて様子をみるを繰り返します。実際に入れる冷媒の量は、補充の場合、非常に少なく、入れ過ぎも困るため、こんな感じになります。

ガス圧が、およそ0.9MPa(130psi)まで注入し、使った冷媒の量は、100g程度でした。
7.ガス補充した後は、室外機に再び冷媒を閉じ込めます。室外機の高圧ガスを閉じ、マニホールドゲージの低圧側が0MPa以下になったところ、室外機の低圧バルブを閉じます。
後は、サービスポートに取り付けたチャージバルブを閉じ、チャージバルブを外します。この状態で室外機の高圧バルブを開き、下の低圧バルブも開き、ガス補充が完了です。
こんな感じの作業になるのですが、丁寧になると、結構な手間がかかります。自己責任にはなるのですが、ここまでしなくても、古いエアコンでもあり、手っ取り早く、ガス補充だけを行い、冷風が出ればいいとなれば、やり方が大分簡単になります。
真空ポンプを使わず、ガス補充だけで済ませるなら
1.室外機のサービスポートにチャージバルブをつなげ、マニホールドゲージの低圧側に接続、真ん中のホースに冷媒のボンベを接続します。
チャージバルブ、マニホールドゲージの低圧側と高圧側、3つ全てのバルブを閉じます。
2.マニホールドゲージの低圧側のバルブを開き、チャージバルブも開き、室外機が停止した状態の圧力が、メーターで分かります。
3.エアコンを強制運転し、マニホールドゲージの低圧側のメーターが下がったのを確認し、この状態で冷媒のガスボンベのバルブを開き、メーターの圧力が0.8~1.0MPaの範囲内になるようガスを注入します。
4.ガスの補充が終わったら、ガスボンベのバルブが閉じているのを確認し、マニホールドゲージの低圧側バルブを閉じ、チャージバルブも閉じて取り外し、完了です。チャージバルブを外す時は、炭酸飲料を開けた時のように、シュッとなります。
2台のエアコンをガス補充し、1台目は丁寧に、2台目はガス補充だけで済ませたのですが。問題なく、どちらも、冷たい冷風が出るようになりました。
個人でガス補充する方の中には、メーターを使わずに、室外機の高圧バルブと低圧バルブの温度差を手で確認しながら、ガス補充するという方もいます。
これは、エアコンが圧力に敏感な家電でもあり、余程、慣れた人じゃない限り、やめた方がいいと思います。
自分でガス補充してみた感想としては、マニホールドゲージなどの道具を揃えれば、そこまで難しい作業ではないです。
暑い時期になると、エアコンの取り付け工事や修理も、業者さんが忙しく、なかなかスケジュールが取れません。暑い中、我慢して待つよりは、自分で対処できれば、こんな楽なことはないです。
業者さんに、ガス補充を依頼しても、自分で一式揃えた金額に、かなり近くなります。家にエアコンが複数ある方なら、やってみる価値は十分あります。